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◼︎野田食菌工業の発展に尽くされた方々  【学術関係者】

 
 

 

「LEMに始まり、LEMに終わる」
私の研究人生

 

戸上昌紀さん
元 日本クリエート社長 野田食菌工業学術顧問  理学博士

 


 合成ゴム時代のさまざまなエピソード


1974(昭和49)年11月、私は合成ゴム株式会社(東京研究支所)に入社しました。最初に研究所長に挨拶に行ったとき、ちょうど机の上に「茸源」が置いてあり、「どうやらこれが、がんにいいらしい」と所長が話していたことを覚えています。私が依頼されたのは、「茸源の何が体に効いているのか」を研究してほしいということでした。実際に研究を始めてみると、分析のために必要な分離操作がうまく行えないなど、障害がたくさんありましたが、主な活性成分は「多糖類」であることがわかってきました。次に、実証実験として、動物試験で抗腫瘍活性を見ることになったのですが、そもそもマウスを飼う場所がなかったので、東京支所に急遽、場所をつくりました。ようやくマウスにおいての抗腫瘍活性を調べたところ、腫瘍の抑制に効果がありそうなことがわかってきました。ではどのような糖がその作用を持っているのか、「β-グルカンではないか」と仮説を立てていたのですが、いざ分析してみるとβ-グルカンの主成分のグルコース以外にも、たくさんの単糖が検出されました。化合物としてみると、構造決定がとても難しそうなので、まずはそこでまとめることにしました。当時、面白いと感じたことは、「茸源」の成分は、シイタケの子実体から製剤化されている抗がん剤のレンチナンの成分とはまったく違うものであるということでした。論文作成の作業は大変でしたが、日本薬学会誌(英文)に投稿して受け入れてもらえたのが1982(昭和57)年のこと。菅野教授の「キャンサーレター」と同じ時期での投稿でした。

日本クリエートでの試行錯誤を経て、研究に自信が


次に会社の施策として九州大学の野本亀久雄教授と共同研究を行うことになりました。内容は、がん患者自身の免疫細胞を採取・培養・再投与する、「養子免疫療法」というものです。このときに、免疫の働きをよく学ぶこととなりました。研究がひと段落した1994(平成6年)、合成ゴムから日本クリエートに出向しまし
た。ちょうどそのときに、菊池龍彦先生が定年を迎えた関係から、今まで先生が行っていた研究活動を私が引き継ぐことになりました。菊池先生は免疫の大切さを、薬局・薬店に啓蒙する活動をしていました。当時は、免疫の作用機序については今ほで日本で研究が進んでいない状況でした。当初は「胸腺が免疫には大切な器官だ」とされていましたが、私が講演を行うときには、免疫に対する肝臓の働きの重要性がわかり始めていました。苦労したのは、菊池先生の講義内容が胸腺免疫主体で私と少し異なるので、なかなか受け入れてもらえないことでした。しかし、LEMで出ている肝臓のデータはすごくいいデータなので、ぜひとも伝えたいと思い、肝臓免疫の大切さを理解してもらいたい一心で活動を続けているうちに、徐々に受け入れてもらえるようになりました。

基礎から臨床まで、きちんと研究されているLEM


私が皆さんにお話をする際は、まず免疫の理解を深めてもらえるようにしています。免疫を理解できないと、LEMを知ってもらうのは難しいのです。独自に免疫とLEMを結びつけた講演を続けているうちに、基礎研究から臨床研究まできちんと押さえているLEMは力がある商品だなと感じました。菊池先生の話は「胸腺とキラーT細胞」の話が中心でしたが、私は「マクロファージなどの免疫に指示を出す司令塔が大切なのではないか」「LEMはその司令塔を活性化させる力があるのではないか」という仮説に基づいて話をしました。司令塔を活性化するので、必然的に免疫自体が良い方向へと調整されると考えると、LEMの活用範囲の幅が広がるように思えます。

 

 

 

       B型肝炎の仕組みと対処法をレクチャーする戸上顧問

LEMの研究は、一生つき合う値打ちがある


約30年間、講演活動をしてきて思うことは、根本的に治療を支えているのは、人が本来持つ免疫の力だということです。野田食菌工業は、免疫についての知見やノウハウがとても豊富なので、そこを一般の人にうまく教えてあげて、不安を感じている人を支えていってもらいたいと思います。また、薬局・薬店の方々には、これからは「予防」を大切にすることを啓蒙していかなければならないと感じています。この仕事に関わって良かったと思うのは、やはり、LEMと出会ったことです。最初にLEMを研究しなさいと言われて、ほとんど何もわからないながらもLEMの研究に関わることになり、30年以上の年月が経ちましたが、LEMの良さを啓蒙することが最後の仕事となりました。私の仕事人生は、「LEMに始まり、L EMに終わる」─これは、とても良かったと思います。なぜならば、LEMと出会って、今までやってきた研究が無駄ではなく、一生つき合う値打ちのある仕事だとわかったのですから。本当にこの仕事に関わってきて、良かったと思います。


 
 

 

免疫の重要性を
啓蒙し続けた先駆者

 

菊池龍彦先生
元日本クリエート取締役  理学博士/故人

 


「免疫」こそ、私たちの身体を守る重要な鍵であると説いた菊池先生


病気と免疫は切っても切れない関係にあり、私たちの体を守る免疫が正常に働いてこそ病気を予防し、健康な生活が送れるのです。また病気になっても免疫のおかげで治り、元通りの元気な状態に回復します。
これからの時代は、医療・医薬品の発展に加えて、健康管理においては免疫が重要な鍵になることは間違いないと思います。
免疫を学んでいく上で、菊池先生の業績は忘れることができません。先生の導きによって、免疫学の扉を開かれた会員は多く、講義は平易かつ名調子でした。菊池先生が無類の酒好きであったことは有名で、実際に「飲ん兵衛菊池博士の赤裸々な人格と人間性が気に入った」という声もありました。エピソードには事欠かない先生でしたが、免疫の知識があまりなかった時代に、その知識を普及させた功績は計りしれないものがあります。
また、戸上博士を含む日本クリエートの学術メンバーには、健康に関する知識を惜しみなく伝えました。その結果、漢方が本来どのような働きをして、健康状態を改善するのかということを啓蒙する契機になりました。「菊池先生に出会えなかったら、自分の職業にこれほど誇りを持てなかっただろうし、大げさに言ってしまえば、地球上に住む生きとし生けるものへの“いとおしさ”が身近なものにならなかっただろう」というほど、ほかの医師にとって菊池先生は恩人であったのです。
 
 
 

 

 
 
  

生体防御研究会の活動では、免疫システムなどを勉強した